飲食店は現金商売です。
つまり、売上が即現金になり、事業経営の問題点である「売上の入金が後になるので、手元に運転資金を持っていなければならない」という問題が起きない業種なのです。
しかし、それはあくまでも現金で売上を受け取っているためで、今後はカード決済に対応しなければならない時代がやってくるかもしれません。
現実に、クレジットカードの普及と、電子マネーやデビットカードなどの普及によって、個人経営の飲食店でもクレジットカード決済を導入している店舗が増えてきています。
実際に日本が世界で最も現金決済が多い国と言われていますので、個人店舗でクレジットカード決済に対応していない日本は世界の中では特別と言えるのかもしれません。
筆者も自分の飲食店で、お客様から「カードを使えますか?」などと言われることはよくありますし、最近多いのがスマホ決済導入の営業です。
飲食店を経営している人の中には、「クレジットカードの導入を検討するべきか」悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
この記事では、飲食店がクレジットカードを導入するメリット・デメリットや導入方法やおすすめのカード決済方法について解説していきたいと思います。
目次
カード決済3つの導入方法
店舗にカード決済を導入するには主に以下の3つの方法があります。
スマホ決済 ①
最近普及しているのがスマホ決済です。
業界最大手の楽天PayやsquareやAirPayやCoineyなどの決済が有名です。
スマホ決済での決済方法は様々ですが、基本的には以下の2つの方法です。
①カード決済端末をスマホやタブレットに挿入してお客様のクレジットカードを読み取り決済する
②店舗側の決済用QRコードをお客様のスマホが読み取り決済する
squareやAirPayやCoineyは①の方法、
楽天PayはやLINE Payは②の方法というようなイメージです。
手数料は3%前後ですのでカード決済の中では最も安価な方法です。
また、導入コストも安く、楽天PayやLINE Payに関しては導入コストはかかりません。
さらに中には翌日入金に対応しているところもあります。
決済代行会社と契約 ②
日本の店舗で最も多いのが、決済代行会社と契約する方法です。
カードブランドは、VISA、MasterCard、JCB、アメックス、ダイナースなど様々です。
本来であれば、これらのカードブランド1社1社と直接契約する必要があるのですが、決済代行会社と契約すれば、決済代行会社1社との契約で、これらのカードブランド会社全てと契約することができるのがメリットです。
私の店舗でもそうなのですが、飲食店を開業すると決済代行会社が営業に来ることが少なくありません。
私は開業当時手数料だけに着目して、ある決済代行会社と契約しました。
手数料は売上の5%でした。
決済代行会社によって手数料は異なり、平均的には4%〜7%程度と言われていますので、まずまず低い手数料で契約できたと思います。
自分から決済代行会社と連絡を取り、自店舗にカード決済を導入することももちろん可能です。
カード会社と直接契約 ③
アクワイアラーと直接契約するという方法もありますが、一般的な店舗には不可能な方法です。
アクワイアラーとは国際カードブランドの代わりに加盟店獲得業務を行う業者です。
このアクワイアラーと直接契約してカード決済を導入することもできますが、個人店舗ではこの方法は現実的ではありません。
アクワイアラーと直接契約できるのは売上規模が数十億円のような大手企業に限定されます。つまり飲食店ですと、大手のチェーン店などしか対象になりません。
売上規模が大きいため、手数料は非常に安く1%〜2%程度と言われています。
カード決済導入のメリット
カード決済導入のメリットは、決済手段が増えることによってお客様が増える(と期待できる)ということでしょう。
実際は、それが集客ポイントになって増えるというより、2回目以降の来店判断のポイントのひとつとなって、お客様を減らさない方策のひとつとなるといったところでしょうか。
しかし、メリットはそれだけではありません。
現金がいらないということは、店舗側の負担が軽くなるというメリットもあります。
外国人にはニーズが高い
外国人はクレジットカードの利用ニーズが非常に高いです。
私の店舗も外国人観光客が非常に多いですが、10組に1組くらいが「カードは使えるか?」と聞いてきます。
私たちが海外旅行に行ってもクレジットカードを使うように、外国人も日本に来てクレジットカードを使います。
さらに、外国人は日本人よりも日常的にクレジットカードを使うためなおさらです。
しかし、私の店舗ではこれまで「カードが使えるから」と言って入店してきた外国人は誰もいません。
Wi-Fiが使えるからと入店して来る外国人はたまにいますが、外国人観光客の集客自体はカード決済が直接的な集客力にはならないというのが私の実感です。
日本人でもカード決済を希望する人は少なくない
飲み会などで、会計の金額が多くなると「カードを使えますか?」と聞いて来るお客様は少なくありません。
カードで決済することは日本人の若い人の中では飲食の際でも普及していると思います。
しかし、私の店舗経営の経験では「カードが使えるから」という理由で集客した経験はありません。
外国人でも日本人でも、カード決済できるということがどの程度集客力を発揮しているかは非常に不透明です。
現金管理のコストがかからない
私がカード決済導入のメリットとして最も大きいと感じる部分はこの点です。
カード決済の代金は全て店舗の口座に入金になるため、現金を管理するコストがかからないのです。
1日の売上が多いと、帳簿と現金があっているかの管理は大変です。
現金と帳簿が合わないと従業員のことも疑いの目で見たくなくても見てしまうものですので、従業員も神経を使います。
私は、現金が何万円も合わなくて、探していたところ、レジの引き出しの裏で丸まっていたことがありました。
経営者が「現金が合わない」と言っているだけで従業員には負担になるものですので、悪いことをしたと思っていますが、キャッシュレスであればこのような経営者と従業員の負担を軽くすることができます。
また、毎週末や毎日銀行へ現金を持っていく必要も無くなります。
電子マネーなどにも対応できる
私は最近個人的にデビットカードを日常的に使用しています。
クレジット=借金という感覚がある日本人はクレジットカードよりもデビットカードや電子マネーの方が普及していると言われますが、私もその気持ちは個人的によく分かります。
デビットカードにはカードブランドがついていますし、スマホ決済はSuicaなどの電子マネーにも対応しているため、現金を持たずにカードや電子マネーで買い物をするという人にもカード決済を導入することで対応することができます。
お釣りの用意が必要ない
飲食店を経営していると、実はかなり負担になるのがお釣りの用意です。
銀行に小銭を用意してもらうと手数料がかなり高いのです。
私が普段利用している銀行では、300枚で108円の手数料が発生します。
1円を300枚つまり、300円引き出すだけでも手数料は108円ですので、このコストは実は安くはありません。
このため、できる限り普段の業者への支払いなどで小銭が出るようにしたり、個人の買い物で小銭を増やして店舗の札と両替するなどして小銭を確保していますが、忙しいときには「お釣りは大丈夫かな?」という心配にもなります。
売上のうち、カード決済が多くを占めるようになれば、お釣りは少なくなりますのでお釣りを用意するコストや手間をカットすることができます。
カード決済導入のデメリット
カード決済導入のデメリットは、大きくは2点です。
それは資金繰りがずれるという点と、手数料です。
資金繰りがずれる
最近のカード決済の入金は翌営業日という場合がありますが、それでも決済代行会社経由でカード決済を導入している私のような店舗は、10営業日後などになってしまうことも珍しくありません。
10営業日後が月末をまたいでしまう場合などは資金繰りは決して楽ではありません。
月末には家賃や業者への支払いなどが待っているためです。
現金商売が飲食店のメリットなのに、例え10日でも入金が後になるというのは経営者にとっては頭が痛いところです。
手数料がバカにならない
売上の4%〜7%程度の手数料(筆者の店では5%)というのは、導入するときにはそれほど大きくは感じません。
しかし、よく考えてみると、商品の原価率を一応計算して価格設定しているもに対して5%程度の手数料が出て行ってしまったら利益が予想よりも合わないことになってしまいます。
ガソリンスタンドが現金での支払いの方が単価が安かったり、飲み屋さんなどに行くと「カード決済はプラス5%とか10%」と言われることが多いのはこの手数料のためです。
飲食店もあえて定価を高くして「現金払いは5%引き」などとできれば楽なのですが、常識的に考えてそのようなことはできませんし、値上げも簡単にはできないため、手数料は店舗の方で被らなければならないのが苦しいところです。
実際に、会計金額が大きくなればなるほど手数料は大きいので「カードで」と言われると、かなり残念な気持ちになるのが本音です。
契約手続きが面倒なことも
カード導入は契約手続きが面倒です。
スマホ決済であれば契約は簡単ですが、私が導入した決済代行会社では、審査や様々な書類に記入が面倒でしたし、申込から導入までは2ヶ月程度の時間が必要だったと記憶しています。
おすすめはスマホ決済
小規模の個人店舗は以下の2つの条件を満たしている決済方法を選択しましょう。
①手数料が安い
②入金サイトが短い
この2つの条件を満たしているのがスマホ決済です。
また、高校生のバイトなどを雇っていると、バイトが端末の使い方を忘れてしまい、会計時にあたふたするということが私は何回もありましたが、スマホ決済であれば操作は簡単です。
導入コストがかからない
QRコードを読み取る形のスマホ決済では導入コストは基本的に発生しません。
また、専用カードリーダーを購入する場合にも購入コストは数千円〜10,000円程度ですので、導入コストはかなり安価です。
手数料が安い
スマホ決済の手数料はサービスによっても異なりますが、多くは3.24%です。
決済代行会社よりも非常に安いため、経営へのダメージは間違いなくスマホ決済の方が軽くなります。
翌日入金のサービスも
楽天Payやsquareは翌日入金に対応しています。
飲食店のカード決済導入の大きなハードルである「資金繰りがズレる」という問題は翌日入金であれば完全に排除することができるのではないでしょうか?
Suica対応の決済も可能
先ほども述べたように楽天PayなどはSuica決済にも対応しています。
筆者の店舗をはじめとして、通常の決済代行会社のカード決済は国際カードブランドのカード決済には対応していますが、普及している電子マネー決済には対応していません。
このような新しい決済手段にも対応できるのもスマホ決済のメリットでしょう。
まとめ
私は飲食店経営者としてカード決済をあまり重視していませんでした。
売上と直結しないという理由から基本的には断っているのも事実です。
普段、私たちも「カードが使えるならこの店に入ろう」とは思わないのではないでしょうか?
結論的に言えば、多様な決済手段の導入は売上の拡大には繋がらないというのが私の考えです。
結局、カード決済など、多様な決済方法の導入というのは、売上の向上というよりも顧客へのサービスの提供なのです。
しかし今、クレジットカード決済だけでなく、電子マネーやQRコード決済などの新しい決済方法が急速に普及してきています。
国の方針としてもキャッシュレス決済率を上げようとしていて、経済産業省はキャッシュレス決済率40%という目標を定めた「キャッシュレス・ビジョン」を打ち出しています。
ほとんどの決済方法は導入コストはかかりませんし、基本使用料もかかりません。
使わないのであれば使わないでお金はかかりませんので、顧客サービスの一環として導入するのはありだと思います。
先ほど述べたように筆者の店舗も決済会社からの営業が多く、最近ではLINE Pay導入の営業電話が非常に多くかかってきています。
これまでは適当にかわしていましたが、「導入してみようかな」という気持ちにこの記事を書いている途中で思うようになりました。
大切なお客様に、料理の味以外でもサービスを提供する手段としてカード決済の導入を検討してみてはいかがでしょう。