収入保障保険、所得補償保険、就業不能保険、その違いをご存知ですか?
2010年代中頃から、よくCMや雑誌の保険特集、街角の保険ショップ等で目にするようになったかと思います。
文字から類推すると似たような内容の保険商品に思いがちですが、実はまったく内容の異なる保険が含まれています。
目次
収入保障保険とは
特徴
収入保障保険とは、一家の大黒柱が亡くなるなど万が一の時に「遺された家族の収入を補うための保険」のことをいいます。
たとえば、夫が亡くなった場合、夫に養ってもらっていた妻や子どもには、遺族年金が国から支払われます。
ただし、自営業の場合は遺族基礎年金のみの給付となるため、会社員家庭(遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取れます)よりも受け取れる金額が少なくなってしまいます。
しかし、子どもの教育資金などもかかってくるため、遺族年金ではまかないきれないことも。
収入保障保険に加入することで、遺族年金では足りない分を補うことができます。
万が一の時の遺族の生活保障の代表的なものに、定期保険があります。定期保険でももちろん十分に不足分をカバーできます。
しかし、定期保険よりも収入保障保険の方が支払う保険料は割安になるため、大きな保障を安い支払いで持ちたいという方に収入保障保険が人気を呼んでいます。
また、家をローンで購入した人にも、収入保障保険を活用する方法が良い場合もあります。
月払い給付金額を毎月のローン返済額と同じ金額に設定し、保険期間をローン返済期間と同じ年数に設定して契約すれば、万が一の時のローン支払いに活用できます。
さらに、共働きの家庭で、家の名義は夫でもローン支払いを奥様もしていた場合、奥様が万が一の時にはたちまちローン返済に困ることがあります。
その場合に備えて、奥様のローン負担分を収入保障保険で補うということもできます。
自営業の方であれば、借り入れやリースなどに対して収入保障保険をかけるという方法もあります。
万が一の時に事業を清算するにしても費用と手間がかかりますし、在庫や設備などをすぐに処分できるとは限りません。
商品の仕組み
給付条件
被保険者が死亡、または高度障害状態のときに、契約時に設定した月払い給付金を毎月受け取ることができます。
各保険会社から同じような収入保障保険が販売されていますが、商品によっては三大疾病の時の保障が手厚かったり、保険料の払い込みが免除になる特約があったり、無事故お祝い金があったりと、様々な特約を付けることもできます。
保険料
保険料は、契約時の年齢、月払い給付金額、保険期間などによって異なります。
30歳の人で、保険期間60歳まで、月払い給付金額(もらえる金額)が15万円での設定だと、約4000円前後/月の保険料になります。付加するオプションによって保険料は異なります。
メリット
定期保険等に較べて割安な保険料で大きな保障を持つことができます。
住宅ローン返済の保障、事業用の借入返済の保障などにも活用できます。
デメリット
掛け捨ての保障になるため、払った保険料は返ってきません。
死亡、または高度障害状態になったときの保障になるため、病気やケガに対する保障はありません。(特約でカバーできるタイプを除く)
所得補償保険とは
特徴
所得補償保険とは、損害保険会社が販売している「働く人が病気やケガで働けなくなった場合に収入を補てんするための保険」のことをいいます。
病気やケガなどで働けなくなると、自営業の方には傷病手当金のような制度がありません。
そのため、働けなくなると収入がなくなり、一気に生活に困ることがあります。
そこで、所得補償保険で働けなくなったときの経済的な負担をカバーすることができます。
商品の仕組み
給付条件
被保険者が病気またはケガによって働けない状態になった場合に、保険金を毎月受け取ることができます。
働けない状態とは、今までの仕事ということではなく、いかなる仕事にも就くことができないことをいいます。
事務仕事など軽い業務ができるようになれば保険金の給付は終了します。
また、契約時に決めた保険金の支給期間を超えたときも、保険金の給付は終了となります。
保険金は契約時に年収の12分の1をかけた金額の60%以内で設定できます。
保険料
5歳刻みで保険料が変わります。毎月15万円を1年間受け取れるプランだと、20代では毎月1000円程度、50代では4000円弱となっています。
同じ名前でも保険会社によってプランが異なります。また、職業によって保険料が異なります。
メリット
保険期間が就業不能保険よりも短いため、就業不能保険よりも割安な保険料で働けなくなった場合の家計負担に備えることができます。
※就業不能保険の詳しい解説はこの後出てきます。
デメリット
更新のたびに保険料があがります。
また、更新時にすでに保険金を受け取っていると、更新できなかったり保険料が割増になったりする可能性もあります。
保険金給付のための条件が「いかなる職業にも就業できない」といった厳しい条件のこともあるため、所得補償保険だけに頼るのではなく、働けなくなったときに備えてある程度現金も用意しておくことが望ましいです。
就業不能保険とは
特徴
就業不能保険とは、働けなくなったときに毎月給付金が支払われる保険です。
所得補償保険は損害保険会社が取り扱っているのに対し、
就業不能保険は生命保険会社が販売しています。
商品の仕組み
給付条件
働けない状態になったときに、保険金が給付されます。
働けない状態とは、今までの仕事ということではなく、いかなる仕事にも就くことができないことをいいます。
事務仕事など軽い業務ができるようになれば保険金の給付は終了します。
また、契約時に決めた保険金の支給期間を超えたときも、保険金の給付は終了となります。
上記の条件は、先に解説した所得補償保険(損保販売)と同じですね。
また、精神疾患や妊娠・出産、薬物依存などによる就業不能状態については、保険会社によって給付対象かどうかがわかれます。
保険料
30代で2400円/月~4000円/月、と各社でばらつきがあります。
働けない状態の定義が保険会社によって異なったり、免責期間が保険会社によって異なったりするためと推測されます。
会社員は、傷病手当金の制度があるため、免責期間についてはさほど気にしなくてもよいかもしれませんが、自営業の場合は働けない状態になるとすぐに収入減につながるおそれがあるため、免責期間についても契約前にしっかり確認しておきましょう。
メリット
保険期間が終わるまで保険料が上がりません。また、就業不能状態になると保険料の払い込みが免除になったり、給付期間の長さを選べたりと、ニーズに応じて様々なプランを設計できます。
デメリット
給付金受け取りのための条件が「いかなる職業にも就業できない」といった厳しい条件のこともあるため、就業不能保険だけに頼るのではなく、働けなくなったときに備えて、ある程度の現金も用意しておくことが望ましいです。
まとめ
収入保障保険、所得補償保険、就労不能保険の違いをご紹介しましたが、いかがでしたか?
収入保障保険は、死亡保険です、つまり、今これを読んでくださっているあなたが万が一の時に、ご家族の生活費を補填するものです。
所得補償保険、就労不能保険は、あなたが働けなくなって収入が途絶えたときに備えるものです。
所得補償保険は損害保険会社が取り扱っていて、1年~5年といった短期間の備えです。
対して、就労不能保険は生命保険会社の取扱で、10年以上の長期間の保障があります。
所得補償保険でも就業不能保険でも注意しないといけないのが、免責期間です。
よくある入院保障も、退院して請求してからでないと受け取れませんが、所得補償保険や就業不能保険では最長180日という長い期間待たないといけません。
つまり、働けない状態になってすぐに受け取れるものではないんです。
自営業の方は特に、働けなくなったときの備えを保険で補うのも大切です。
しかし、まずは、3か月~半年、1年くらいは収入が途絶えても生活に困らないように生活資金を準備しておくのが良いでしょう。
最後に、これら3つの保険の違いがひと目で分かるように比較一覧表を作りましたので、参考にしてみてください。
収入保障保険、所得補償保険、就労不能保険の違い
収入保障保険 | 所得補償保険 | 就労不能保険 | |
取扱い会社 | 生命保険会社 | 損害保険会社 | 生命保険会社 |
保険金を受け取れるとき | 死亡、または高度障害状態のとき | 働けなくなったとき | 働けなくなったとき |
保険金を受け取る人 | 遺族 | 本人 | 本人 |
保険期間 | 長い(10年以上) | 短い(1年~10年) | 長い(10年以上) |
更新 | 有り/無し選択可 | 有り | 無し |
更新時の取り扱い | 診査なしで更新可 | 保険金を受け取っていたら更新不可の場合もある。 | - |
保険金の額 | 契約時に設定した金額(定額) | 受け取り時の収入による(実損填補) | 契約時に設定した金額(定額) |