自営業の家庭は、収入の大黒柱が会社員の場合に比べて、死亡保障を多く考える必要があります。
目次
自営業の夫が亡くなった場合
パターン1(会社員の夫、専業主婦の妻で夫が亡くなった場合)と同様の家族構成、生活費で、
・夫39歳、妻36歳、子ども3歳の時に夫が亡くなったという想定。
・生活費30万円(教育費も込み)というモデル。
自営業の夫が亡くなった後の公的年金で保障される額を計算していきます。
遺族基礎年金:月額83,716円
妻の老齢基礎年金:月額65,008円
と仮定して、夫の死亡から妻が平均余命である87歳で亡くなるまでに受け取れる公的年金の額は、
子どもが18歳になるまで
遺族基礎年金:月額83,716円
83,716円×12×(18-3)=1,506万円
子どもが18歳(その時妻は51歳)になってから妻が老齢年金を受け取るまで
遺族基礎年金がなくなるため、1円ももらえません。
妻が老齢年金を受け取る年齢(65歳)になってから、平均余命(87歳)でなくなるまで
老齢基礎年金:月額:65,008円
65,008円×12×(87-65)=1,716万円
夫が亡くなってから妻が亡くなるまでに受け取れる公的年金の合計額は
1,506万円 + 1,716万円 =3,222万円になります。
①亡くなった後の遺族に必要な生活費の合計は10,620万円と計算されているので(こちらのページで計算済み)、
公的年金だけでは足りない保障額は、
10,620万円‐3,222万円=7,398万円 となります。
*亡くなった夫が自営業で、
・国民年金保険を25年以納付(免除期間含む)
・婚姻期間が10年以上
・妻が老齢基礎年金を受け取っていない
という条件に当てはまれば、妻が60~64歳の間に寡婦年金を受け取ることができます。寡婦年金額は、夫の老齢基礎年金額の3/4になっています。(月額約48,756円)
会社員と比較して自営業は遺族が受け取れる公的保障が少ない
パターン1とパターン2を比べてみてもわかるように、夫が亡くなった場合、
夫の職業によって遺族が受け取れる公的年金額が大きく異なるのと、生命保険で備えるべき保障額が異なることがわかりますね。
生活費30万円(標準報酬月額35万円と仮定)の家庭で比較しただけでもこれだけ大きく異なるので、
子どもの数、子どもの教育費(私立大学か国公立か)年収や生活水準、借金(住宅ローンなど)の有無などで備えるべき死亡保障額は大きく異なってきます。
住宅ローンを組む際に団体信用生命保険に加入している場合は、ローンがあったとしても、夫の死亡時に団体信用生命保険によってローンが完済されるため、それ以降のローンの支払いはなくなります。
家を買って、団体信用生命保険に加入した場合は、その分生命保険で備えるべき死亡保障額が下がることになります。
しかし、他の借金(大学の奨学金や、車のローン、自営業であれば事業資金の融資など)については夫が死亡しても遺族が支払わないといけなくなる可能性もあるため、その分を死亡保障に上乗せする必要があります。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター『公的な遺族年金の仕組みについて知りたい』http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/provision/11.html
参考:公益財団法人 生命保険文化センター『団体信用生命保険について知りたい』http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/house/9.html
今回の事例は「18歳未満の子どもがいる場合」の死亡保障で考えています。
では、新婚で子どもがいない家庭や、すでに子どもが独立して夫婦だけの家庭の場合はどのようになるんでしょうか?
次のページでは、子どものいない家庭や年の差で結婚した家庭などのパターンを考えていきます。
子供のいない家庭や年の差婚で生命保険の死亡保障はいくら必要?遺族年金の金額も
注)
1.このコラムでの年金制度については2016年1月時点での情報をもとに作成しています。また、各年金額については2015年の金額をもとに計算しています。
2.遺族年金の受給要件につきましては、このコラム記載以外にも細かく設定されている場合があります。詳細は日本年金機構 http://www.nenkin.go.jp/ の情報をご覧ください。
3.いろいろな家族のパターンでの遺族年金のシミュレーションにつきましては、年金の未納や免除期間が無く、満額受給可能な条件を満たしていると仮定して作成していますので、実際の受け取り額につきましては、被保険者それぞれの加入期間、標準報酬月額、未納や免除期間の有無によって異なりますことをご了承ください。
4.詳細な年金支給額につきましては、1年に一度送付される『ねんきん定期便』を確認するか、各地域の年金事務所、社会保険労務士などの専門家にお問い合わせください。