住宅ローンの返済はどのように行い、毎月どの程度の返済額が無理のない返済額なのでしょうか?
無理のない返済額を設定しないと、のちのち返済が難しくなってしまうこともあります。
また、返済が難しくなった場合には、様々な対処方法があります。
このため、万が一返済が困難になったら銀行に相談すれば、銀行も返済が可能となるようにできる限りの支援を行ってくれます。
この記事では、住宅ローンの返済方法と返済が困難になった時にはどのような対処を行えばよいのかなどについて解説していきます。
目次
住宅ローンの支払い方法
住宅ローンの返済金の支払い方法は基本的に毎月1回の決まった日である約定日に行う方法で返済をします。
事前に返済額がどのくらいになるのかを知ることで、毎月無理のない返済計画を立てることができます。
また、返済以外にも住宅ローンには様々な支払いがありますので、そちらについても理解をしておかないと思った以上に支払いが大きくなってしまうことがあります。
融資実行日の翌約定日からスタート
住宅ローンの返済は融資実行日の翌約定日から始まります。
約定日とは毎月決まった返済日のことで、住宅ローンのでは毎月1日~月末日までの自由な日を設定することができます。
例えば、毎月20日を約定日としていた場合には、1月10日に住宅ローンが実行となれば最初の返済日は1月20日から、1月25日に住宅ローンが実行された場合には、2月20日から返済が始まります。
元金返済据え置きの場合も利息の返済は始まる
住宅ローンは元金の返済を建物完成まで据え置いて、建物完成後から元金の返済を始めるという返済方法を設定することができます。
例えば、住宅ローン実行から6か月後に建物が完成するため、6か月間の据置期間を設定する場合には、元金の返済が始まるのは6か月後からになります。
一方、利息は毎月支払っていかなければならないため、最初の6か月は利息だけの支払いを行い、7か月目から元金と利息を返済していくという方法があります。
住宅ローン借入銀行口座からの口座引き落とし
民間銀行や信用金庫などから住宅ローンを借りた場合の返済は絶対に住宅ローンを借りた銀行の普通預金口座からの返済となります。
また、フラット35を借りる場合には、指定する銀行の普通預金口座からの口座引き落としとなります。
給与振込口座などを指定しておけば返済忘れはないでしょう。
支払額をシミュレーションする方法
自分が借りようとしているローンが毎月いくらの返済になるのかをシミュレーションする方法は非常に簡単です。
インターネットで『ローン電卓』と検索し、借入額・金利・返済回数(借入年数)を入力すれば簡単に毎月の返済額が表示されます。
アプリでもローン電卓はあるため、ぜひ活用しましょう。
支払総額と利息総額を知ろう
毎月返済額がシミュレーションできれば支払総額から利息の支払総額を知ることは簡単です。
「住宅ローンの金利は馬鹿にならない」と言いますが、この計算を行うと、利息の負担がいかに馬鹿にならないのかがよくわかります。
毎月返済額×支払回数-借入額=利息総支払額となります。
試しに試算を行ってみましょう。
借入金額3,000万円、金利1%、期間30年の住宅ローンを借りた場合の毎月返済額は96,492円となります。
支払総額=96,492円×30年×12ヶ月=34,737,120円
利息負担額=34,737,120円-30,000,000円=4,737,120円
30年間で高級車1台分くらいの利息負担となります。
ちなみに金利1.2%の場合の毎月返済額は99,273円、利息負担額は5,725,320円
たった金利が0.2%違いうだけで利息負担額は100万円近く異なることになり、金利は決して馬鹿にできません。
平均は月収の20%程度で無理のない返済を
平均的に住宅ローンを借りている人の毎月返済額は月収の20%程度と言われています。
月収40万円であれば毎月8万円程度の返済です。
住宅ローンは年収の30%~35%程度までの返済が認められていますが、ここまで返済してしまうと、生活に無理が生じてしまうため、基本的には20%程度にとどめるように支払い方法を決定しましょう。
返済以外の支払い
住宅ローンには返済金以外の支払いがあります。借入時に必要になるものや、住宅を借りている間ずっと必要になるものがあります。
火災保険料
住宅ローンを組んだら火災保険に加入することが条件になります。
火災保険料の支払方法は大まかに分けて以下の3つの方法があります。
①全期間前納
住宅を購入した際に、契約期間すべての保険料を前払いする方法です。保険料は数十万円になりますが、前納の割引があるため最もお得は支払い方法です。
②年払い
1年に1回保険料を納める方法です。
③月払い
毎月保険料を納める方法です。住宅ローンの返済金とは別に毎月支払うお金として口座に入れておかなければなりません。
保証料
住宅ローンの保証料には前払いと分割払いがあります。
前払いを選択する場合には住宅ローン実行時に保証料を一括で支払う必要がありますが、保証料を借入元金に加えてローンを支払っていくことができます。(住宅価格+保証料=借入額)
分割保証料の場合には、住宅ローンの金利に0.1%~0.4%程度の金利が保証料分として上乗せされます。
前払い分を用意する必要はありませんが、分割払いのほうが支払う保証料の合計は多くなります。
頭金
住宅や土地を購入する際の自己資金です。
頭金500万円、住宅ローン3,000万円で合計3,500万円の物件を購入する場合には、500万円の頭金が確認できない場合には3,000万円の住宅ローンも実行されません。
そのため、前もって住宅ローンを借りる銀行に通知預金などで、住宅ローン実行前から預金をしておくことが一般的です。
ローンの途中で可能な支払い方法変更
ローンを返済している途中で「ボーナスがなくなった」「給料日が変わった」などの理由で返済が厳しくなった時には銀行に言えば相談に乗ってくれ、対応してくれることがあります。
返済がきつい場合や厳しい場合には相談に応じてくれる
返済がきつい場合や今の返済額では厳しくなった場合には銀行には相談に乗って、何等かの方法で返済を支援する努力義務があります。
解決の方法は様々なりますが、条件変更手続きによって要注意債権となり、銀行にとって不良債権一歩手前となる手続きもあります。
しかし、以下の手続きの場合には、要注意債権とならないため、銀行は気軽に応じてくれます。
ボーナス返済をなくす
会社の報酬が年俸制になってしまいボーナスがなくなった場合や、給料は上がったものの、転職によってボーナスがなくなってしまったような場合にはボーナス返済が厳しくなります。
このような時に、期間を延長せずにボーナス返済をなくし、ボーナス返済をなくした分で毎月返済額を増額する場合には簡単に応じてくれます。
年収を証明する源泉徴収票などを持参しましょう。
返済日を変更する
給料日が変わったなどの事情で返済が困難になった場合には、返済日を変更することができます。
この手続きも比較的簡単で、「給料日が変わったから給料日直後に返済日を変更してほしい」などと言えば、銀行は気軽に応じてくれます。
なお、これらの手続きには所定の手数料が発生することがあります。銀行によって異なるものの、5,000~30,000円プラス消費税となることが一般的です。
住宅ローンが払えなくなったらどうする?
住宅ローンを払うことができなくなった時には、まずは一刻も早く銀行に行ってください。
理由によっては返済義務がなくなることもあります。
住宅ローンを払えなくなった場合にはどのようなケースが想定されるのでしょうか?
まずは銀行に相談
上記のような理由以外の給料が下がった、借金が増えて返済が困難、無職になったなどの理由で返済が困難になった場合にはまずは銀行に相談しましょう。
どのような相談でも銀行は必ず相談に応じる義務があります。
払えない理由によって対応が異なる
銀行に相談する際には「なぜ払えないのか」という理由を明確にすることが重要です。
職がない、給料が下がった、病気、他の借金などの理由によって銀行が取るべき対応が異なるためです。
病気で払えない場合は団信が利くかも
フラット35以外の住宅ローンは団体信用生命保険への加入が必須です。団体信用生命保険は借主がもしも無くなってしまった場合には、生命保険から住宅ローンを返済し、残された家族に借金が残らないようにするとともに、住宅を守るという意味があります。
この団体信用生命保険には特約を付けることができます。
例えばガン特約であれば、ガンと診断された時点で住宅ローン0円というものもありますし、ガンと診断されて所定の状態が6か月以上継続したら住宅ローン0円などというものもあります。
また、同じように3大疾病や8大疾病特約もあり、所定の状態が数か月継続したら住宅ローン0円となるものや、療養中の返済金を保険金から支払ってくれるというものもあります。
特約の内容は住宅ローンによって異なりますが、住宅ローン借入時に団信特約に加入した人は病気になれば何らかの形で保険が利く可能性がありますので、まずは銀行へ相談してみましょう。
住宅ローンが払えない人の割合は?
自己破産した人の中で、住宅ローンが払えない人の割合は16%程度となっていると言われています。
しかし、皆が自己破産をしているわけではないため、住宅ローンを借りた人の中で自己破産している人の割合は1%程度です。
少ないといえば少ないといえるのかもしれませんが、200戸のマンション住人のうち、2人は住宅ローンの返済ができずに自己破産をしていることになるますので、自分には関係のないと考えるのは危険かもしれません。
また、年収300万円程度での住宅ローン借入がもっとも住宅ローンを払えなくなる人の割合が多いと言われています。
住宅ローンが払えないと競売になる?
住宅ローンが払えないと即競売となるわけではありません。
払えなくなってからの手続きは一般的に以下のようになります。
①期間延長・返済猶予などの条件変更手続き
②代位弁済
③競売
①で返済支援措置を行ったのにも関わらず返済状況が改善しない場合は、銀行は借入額を保証会社に立て替えてもらう代位弁済手続きを行います。代位弁済を行うと、ローンは銀行から保証会社へ移り、その後は保証会社へ返済を行っていくことになります。
②で債権が保証会社へ移ったのちも返済ができない場合や、連絡がつかなくなった場合には、保証会社が裁判所へ強制執行の申し立てを行い、担保となっている住宅は差し押さえられます。
差し押さえ後に所定の期間が経過すると、資産は競売にかけられてしまうことになります。
返済困難=即競売というわけではありません。
返済困難になった時の銀行の対応
住宅ローンの返済が困難になった時には銀行は理由によって必ず何かの対応を行ってくれます。
まずは返済困難な理由を細かく銀行に相談
先ほど述べたように、返済が困難な理由をまずは銀行へ相談してください。
対応策は必ず存在する
返済困難な理由によって、対応策は異なりますが、基本的に何かの対応は行ってくれます。「どうしても今まで通り返済してください」という対応には絶対になりませんので、正直に銀行と話し合いを行いましょう。
借主が病気や死亡により返済が困難
借主が死亡した場合には団体信用生命保険の保証が利きます。自殺の場合にも多くの場合には借入から1年以上を経過している場合には保証が利きます。
筆者が銀行員時代に、借主が自殺して、奥さんが窓口に相談に訪れ、借入から1年以上経過していたため、団体信用生命保険ですべて返済したということがあったのを思い出しました。
また、団体信用生命保険の特約に加入している場合には病気の種類や程度によって何かの補償が利く場合があります。
期間を延長して返済額を軽減する方法
返済期間を延長すれば、その分毎月返済額は少なくなります。
例えば、借入残高2,000万円、金利1%、残期間20年のローンの毎月返済額は91,979円ですが、このローンの期間を10年延長すれば毎月返済額は64,328円となり、毎月返済額は27,000円程度少なくなります。
この手続きを行うためには審査が必要になりますが、毎月返済額を軽減すれば返済が可能になるという合理性が認められれば審査に通過することは不可能ではありません。
当然ながら、期間を延長した分だけ利息の支払額は大きくなってしまいます。
支払いを一時停止して猶予する方法
会社の倒産などによって無職となってしまった場合に行われる方法が、支払いの一時停止です。例えば、支払いを一時停止して、その停止期間のうちに職を探してくださいという手続きになります。
この場合は元金の支払いが停止されるだけで、毎月利息だけは支払っていかなければなりません。
住宅ローン元金の減額はできる?
住宅ローン借入残高そのものを減額するという手続きは基本的に素人にはできません。
弁護士等のプロに依頼して「任意整理」という方法を行ってもらうしかありません。
任意整理とは「○○の理由で借主は返済が不可能ですので借金をチャラもしくは返済できる金額まで減額してください」という手続きになります。
これは銀行などの債権者との個別の交渉になりますので、通常素人が行っても減額は不可能です。
また、応じるか応じないかは債権者の判断にゆだねられます。
ちなみに、保証会社付きの銀行住宅ローンはこの通知を弁護士から受け取った時点で代位弁済手続きを行い、債権は保証会社に移りますので、弁護士などは保証会社と任意整理の交渉を行うことになります。
借入期間を延長する方法
返済額を軽減する方法としては最もポピュラーな方法である借入期間の延長ですが、期間の延長には審査があり、手数料も発生することがあります。また、住宅ローンによっては借り換えによって期間の延長と利息負担の軽減が図れることがあります。
期間延長には審査がある
期間を延長するためには審査があります。
通常、審査は以下のような流れで行われます。
①現在の収入と、生活費をすべて提出
銀行には収支を記入する一覧表がありますので、この用紙に現在の収入と生活費をすべて記入し、毎月いくらなら返済に充てることができるのかを明確化します。
②期間延長によって返済可能と判断された場合には稟議を上げる
期間を延長したことによって返済が可能になると判断された場合には銀行内部で稟議を上げることになります。
また、延長したことによって完済が高齢になる場合には、高齢の時の返済見込みも重要になります。
③期間延長
銀行内部で審査に通過できれば無事期間の延長が可能になります。
期間延長には手数料がかかる
期間延長は条件変更という手続きに該当しますので、通常は10,000円~30,000円プラス消費税の手数料が必要になります。
借り換えによって延長できることも
住宅ローンを他の銀行の住宅ローンで借り換えることによって、返済期間を延長することができる場合もあります。この際、金利も下がれば期間の延長によって返済額が下がったことに加え、金利の低減によりさらに毎月返済額が下がる可能性もあります。
返済猶予は可能
返済を一定期間猶予するという方法も理由に合理性があれば可能です。
しかし、利息だけは毎月支払っていかなければなりませんし、完全に支払いを停止するということは基本的には自己破産するしかありません。
審査によって返済猶予はしてもらえる?
先ほど述べたように、返済が困難になった原因が一定期間の猶予があれば解決できる可能性の高い、職業を失うような事態となった場合には返済の猶予に応じてもらえる可能性があります。
元金支払いの一時停止は可能
返済の猶予とは元金の返済を一定期間停止することです。
一定期間の返済猶予に合理性が認められる場合には銀行が応じてくれる可能性があります。
しかし、利息だけは毎月支払っていかなければなりませんし、猶予期間が終了したら元通りに毎月の返済が始まります。
完全な返済停止は不可能
利息も元金も完全に返済を停止することは不可能です。返済猶予とは「一定期間、元金の返済だけを猶予する方法」ですので、利息の支払いも元金の返済も完全に停止するということは絶対に不可能です。
これをするには、任意整理によって銀行や保証会社が債務を放棄するか、自己破産をするしかありません。
住宅ローンのリスケジュールとは?
住宅ローンの返済計画を見直すことをリスケジュール(リスケ)などと言います。
リスケジュールには期間の延長は支払の猶予も含まれます。
リスケジュールには返済額の軽減や返済猶予ができるというメリットがありますが、リスケ中は新規借入を行うことが難しくなるというデメリットもあります。
審査はあるが1回までなら可能
銀行には返済が困難となった債務者の返済支援に応じる義務があります。そのため、やむを得ない事情で返済が困難となった場合には、何らかの方法でリスクスケジュールには応じてくれます。
リスケジュールのメリットは銀行が返済の支援を行ってくれるという点にあります。
どうしても返済が困難になったらまずは相談してみましょう。
基本的に1つのローンにつき、1回のリスケジュールには応じてくれます。
当該銀行での借入は不可能
リスケジュールは返済を支援してくれるというメリットがありますが、リスケジュール中はその銀行から借入を行うことは不可能になりますし、リスケジュールを行っているローンの借り換えを行うことは不可能です。
借り換えによっても返済額の軽減を図ることができる可能性がありますが、返済困難となる前に借り換えの申込を行わないと、借り換えは不可能になります。
フラット35のリスケジュールは可能?
住宅金融支援機構のフラット35もリスケジュールが可能です。銀行と同じく、基本的に1回まで対応しています。
相談は、フラット35の窓口となった金融機関やローン会社に行えば、その代理店が住宅金融支援機構へ取り次いでくれます。
借金を減額する個人再生とは?
個人再生とは、借金を原則的に5分の1まで減額したうえで、3年~5年かけて返済していく法的な手段で、個人再生を行うには裁判所の決定が必要になります。
また、個人再生は信用情報に事故情報として登録されますので、当該情報が記録されている10年間は銀行からの借入は不可能になります。(消費者金融は5年間)
個人再生では住宅ローンは減額されない
個人再生とは住宅と住宅ローンを残したうえで、その他の借金を原則5分の1に減額する方法です。
借金を減額させたうえで住宅を残すことができるというメリットがあります。
このため、個人再生では住宅ローンの返済は継続していかなければなりません。
カードローンなどの無担保の借入が多すぎて住宅ローンの返済が困難になっているという人は、個人再生を利用すれば住宅ローン以外の借金が減額されますので、住宅ローンの返済も可能になることもあります。
しかし、他の借金がないのに住宅ローンの返済そのものに苦しんでいる人は個人再生では救われることはありません。
住宅ローンの返済支払い方法と返済支払いが困難になった時 まとめ
住宅ローンの返済が困難になってしまったらまずは銀行へ相談することが重要です。
銀行は債務者の返済を支援するという義務を負っているため、返済が難しい人には何かしらの対応をしてくれます。
具体的に返済支援の方法としては以下の方法があります。
①毎月返済できるだけのお金がない→期間延長
②職を失い、新しい職が見つかるまでは返済ができない→返済猶予
③借主の死亡や病気などで返済ができない→団体信用生命保険による補償
④住宅ローン以外の借入金が多く、住宅ローンの返済が困難→個人再生
どのような理由によって、返済が困難になっているのかによって銀行の対処が変わりますので、銀行に返済困難な理由を詳細に伝えるということが重要になるのです。
相談すれば銀行はこのようなリスケジュールの対応を行ってくれますが、最悪なのは相談せずに逃げてしまう場合です。このような場合には差し押さえなどの手続きが取られることもありますので、とにかく面倒がらずに相談することが重要です。